整体・整骨院の顧客管理とは、予約・カルテ・回数券の残数・来院サイクルを1か所に集めて、探す時間と取りこぼしをなくす仕組みのことです。紙のカルテと予約帳を別々に持ったままでも日々の営業は回りますが、患者さんの来院が途切れはじめたときに手が打てません。この記事では、整体院と整骨院で必要な記録がどう変わるのか、台帳に何を持てば破綻しないのかを、厚生労働省の通知やガイドラインといった一次情報にもとづいて整理します。
この記事でわかること
- 台帳を2つに分ける考え方: 保管のための「法定の施術録」と、明日の来院をつくるための「顧客台帳」は目的が違います。混ぜると両方が使えなくなる理由と、分け方がわかります。
- 最低限持つべき5項目: 回数券の残数と有効期限、最終来院日と次回の目安、直近12か月の施術月数と部位数。整体・整骨院には「数えておかないと困る数字」があります。
- 踏んではいけない3つの地雷: 要配慮個人情報の同意、回数券の6か月ルール、そして広告規制。院の種別によって、かかる法律そのものが違います。
整体・整骨院の顧客管理が破綻する3つの原因
顧客管理が破綻するのは、記録の量が多いからではなく、同じ情報が2か所に分かれて、どちらが正しいか誰にも分からなくなるからです。
現場で起きている詰まりは、大きく3つに集約されます。
ひとつ目は、予約の入り口が2か所に分かれることです。Web予約やLINE予約を導入した院で最も多い崩れ方が、これです。整骨院の運営支援に携わる方の言い方を借りれば、「Web予約を入れたあとに、よくある崩れ方が、これです。電話で受けた予約だけ、紙に書く」という状態になります。予約は2か所にあることになり、ダブルブッキングと来院見込みの読み違いが同時に起きます。
ふたつ目は、回数券の残数が人の記憶のなかにあることです。院内で残数を突き合わせられないと、患者さんとの認識がずれます。X上で実際に語られているのは、院側の管理の悩みよりもむしろ患者側の不信でした。「有効期限が切れた整体の回数券」「回数券を返したい」といった声や、閉院した院について「回数券は閉院後しか返金しないそうです」という投稿が並びます。残数と期限は、院の帳簿の都合ではなく、患者さんとの約束そのものです。
3つ目は、施術メモが施術者ごとに違い、担当が代わると読めなくなることです。鍼灸の分野で活動している方が「鍼灸施術は定量化しづらい。同じツボなのに鍼灸師によって効果が異なる。属人性が高すぎる」と書いたうえで、それでも「カルテは付けた方がよい。共有する前提でつける。感覚でやっているからカルテには書けない、と諦めちゃだめだ」と続けていました。属人性が高い仕事だからこそ、共有できる形で残す必要があるという指摘です。
3つに共通しているのは、記録が足りないのではなく、同じ事実が2か所にあって突き合わせが必要になっているという点です。顧客管理の目的を「情報を増やすこと」に置くと、この構造は解けません。
まず台帳を2つに分ける|法定の施術録と、運用の顧客台帳
整体・整骨院の顧客管理で先にやるべきなのは、保管のための記録と、明日の来院をつくるための記録を分けることです。
同じ「カルテ」という言葉で呼ばれていても、この2つは目的がまったく違います。保険を扱う整骨院・鍼灸院の施術録は、保険者や厚生局に提示するための記録で、書くべき内容も保存期間も決められています。一方、顧客台帳は「次にいつ来てもらうか」を決めるための記録で、決まった形はありません。この2つを1枚のシートに同居させると、法定の記録としては項目が足りず、運用の記録としては重くて誰も入力しなくなります。
そして、そもそも自院がどちらの立場なのかで、必要な記録が変わります。「整体師」は国家資格ではなく、施術所としての届出も要りません。これに対して柔道整復師は柔道整復師法、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師はあはき法にもとづく国家資格で、施術所の届出義務があり、法律上の守秘義務も課されています。厚生労働省の衛生行政報告例によれば、令和6年度の柔道整復の施術所は50,924か所、はり・きゅうは35,494か所です。整体院はこの統計には出てきません。制度の側から見ると、そもそも別のものとして扱われています。
| 項目 | 整体院(自費のみ) | 整骨院・接骨院・鍼灸院(保険+自費) |
|---|---|---|
| 資格 | 国家資格の定めなし | 柔道整復師/あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(国家資格) |
| 施術所の届出 | 不要 | 必要(柔道整復師法第19条/あはき法第9条の2) |
| 保険(療養費) | 扱えない | 受領委任の登録で扱える |
| 施術録 | 法定の保存義務なし(自主的に残す) | 受領委任なら施術管理者に加えて開設者にも5年間の保管義務 |
| 守秘義務 | 法律上の規定なし(雇用契約・就業規則で担保する) | 柔道整復師法第17条の2/あはき法第7条の2による法定の守秘義務 |
| 広告規制 | あはき・柔整の広告規制の対象外。景品表示法などが別途かかる | 柔道整復師法第24条/あはき法第7条により、広告できる事項が限定される |
| 台帳で必ず持つもの | 回数券の残数と期限、最終来院日、同意 | 左に加えて、初検日・部位数・直近12か月の施術月数 |
整体院で「うちは保険を扱っていないから関係ない」と読み飛ばせるのは、この表の右列だけです。回数券と個人情報の扱いは、どちらの院にも共通してかかります。
保険を扱う院は、施術録が法定の記録になる
受領委任を取り扱う整骨院では、施術録は院内のメモではなく、5年間の保管義務がかかる法定の記録です。
厚生労働省が施術者向けに出した通知では、平成22年9月1日から施術管理者だけでなく開設者にも施術録の5年間保管義務が課され、あわせて施術所を廃止したあとも5年間は、開設者・施術管理者・勤務柔整師が帳簿および書類の検査や説明の求めに応じることとされました。院を閉じても記録の責任は残る、という設計です。
記録の中身にも決まりがあります。柔道整復の療養費の支給対象は外傷性が明らかな骨折・脱臼・打撲・捻挫に限られ、骨折・脱臼は医師の同意が必要です(応急手当には不要)。逆に、内科的原因による疾患、単なる肩こり・筋肉疲労、入院中、保険医療機関で同じ負傷を治療中のものは支給対象外です。支給申請書には、被保険者本人の自筆による署名(できない場合は拇印)が要ります。
ここに、2026年に入ってからの制度変更が重なりました。厚生労働省は令和8年6月1日付の通知で改正内容を示し、令和8年7月1日から適用しています。現場の柔道整復師が「接骨院の保険制度が変わる。内容を患者さんに説明しようとしたが、これがなかなか難しい。8ヶ月以上、9部位以上、償還払い、制度を理解してもらおうとすると、もはや呪文になる」と書いていたのが、この改定です。
| 制度側の変更 | いつから | 台帳側で持っておく項目 |
|---|---|---|
| 2部位目にも多部位逓減が入った(従来は3部位目から) | 令和8年7月1日 | 患者ごとの施術部位数と、部位が治癒して減った日 |
| 明細書発行体制加算が「明細書発行加算」に変わり、交付するたびに算定できるようになった | 令和8年7月1日 | 交付した日の記録(月1回まとめて交付する場合の扱いも含む) |
| 初検料は、治癒または中止の翌日から3月内は算定できない | 令和8年7月1日 | 直近の治癒日・中止日(次の来院で初検になるかの判定に要る) |
| 前月までの連続する12か月で、通算8月以上かつ9部位以上の施術を受けている患者が、償還払い注意喚起通知の対象に追加 | 令和9年1月以降 | 直近12か月の施術月数と、累計の部位数 |
| 支給申請書の「継続月数」欄は、1月につき10回以上の施術を行っていた連続月数を書く | 継続中 | 月ごとの施術回数(10回を超えたかどうか) |
この表の右列が本題です。制度の解説そのものより、制度が変わるたびに「台帳に持っておかないと困る数字」が増えていることのほうが、院の運営には効いてきます。とりわけ令和9年1月からの基準は、患者さん個人の12か月分の履歴を院が把握していないと、ある日突然その患者さんが償還払いに切り替わり、窓口で全額を払ってもらう説明をする羽目になります。
記載ミスの跳ね返りも小さくありません。整骨院向けの発信では「またこの申請書、返戻されてる。療養費支給申請書、記載ミスがあると保険者から返戻されて、再提出のためにもう一度施術録を見直して、書き直して、また郵送する。この往復、地味に時間を食います」という言い方がされていました。施術録と申請書がずれていると、この往復が発生します。
レセコンと顧客管理は、無理に1つにしない
請求のためのシステムと、来院をつくるためのシステムは目的が違うので、1本化を狙わずに分けたほうが破綻しません。
「保険請求も予約もカルテも再来案内も全部1つで」と考えると、必然的に多機能で高額な製品しか候補に残らなくなります。実際、元鍼灸師・柔道整復師でシステムを開発している方が「治療院の予約システムって、なんだかんだ月額11,000円くらいになりますが、ぶっちゃけ高くないですか。個人治療院・サロンにとってはムダな機能だらけに思えた」と書いていました。1人から数名規模の院が意識している価格帯は、月1,000円台から1万円前後です。
現実的な組み方は、請求はレセコン、予約と再来案内は別に持ち、患者を識別する番号だけを揃えるという形です。両方に同じ患者IDを振っておけば、突き合わせが必要になったときに手作業でも追えます。逆に、IDが揃っていない状態で機能だけ増やしても、二重入力が増えるだけです。
なお、システムの選び方そのものは業種を問わない話なので、機能領域やタイプ別の整理は顧客管理システム(CRM)とは?失敗しない選び方と目的別おすすめツール比較にまとめています。この記事では、整体・整骨院の台帳に何を持つかに絞ります。
顧客台帳に最低限持つ5項目
整体・整骨院の顧客台帳は、氏名と連絡先、来院日、主訴と同意、回数券の残数、保険の履歴の5項目があれば動きます。
項目は増やすほど入力されなくなります。実際に入力が続いている院ほど、持っている項目は少ないのが普通です。最初は次の5つだけに絞り、運用が回ってから足してください。
2番目の「最終来院日と次回の目安」は、いちばん軽いのに、いちばん効きます。この2つが入っていれば、再来案内は「次回の目安を過ぎたのに予約が入っていない人」を抽出するだけで組めます。逆に、ここが無い台帳は、名簿としては正しくても、次の行動につながりません。
3番目の「同意の有無」については、次の章で扱います。主訴を書いた時点で、その記録の性質が変わるためです。
台帳設計で踏んではいけない3つの地雷
整体・整骨院の顧客管理には、要配慮個人情報の同意、回数券の有効期限、広告規制という3つの落とし穴があります。
地雷1:主訴を書いた時点で、要配慮個人情報になりうる
個人情報保護法の要配慮個人情報には、人種・信条・社会的身分・犯罪の経歴などに加えて、病歴が含まれます。さらに政令と規則によって、身体障害等の情報、健康診断その他の検査の結果、医師等による指導・診療・調剤が行われたことが加わります。そして要配慮個人情報は、取得するのにあらかじめ本人の同意が必要です。
問診票に「椎間板ヘルニアと診断されたことがある」「通院中の疾患」と書いてもらった時点で、その台帳は通常の名簿とは扱いが変わります。同意は「問診票を書いてもらったから取れている」ことにはなりません。利用目的を示したうえで、明示的に同意してもらう形にしてください。問診票の末尾やLINEの登録画面に、次の3点を入れておくのが最小構成です。
- 何に使うか: 施術と経過の記録、次回来院のご案内、保険請求(該当する院のみ)に使います、と書く。
- 誰が見るか: 施術を担当する者と受付が見ます、と書く。外部に提供しないなら、その旨も書く。
- 同意の取り方: チェックボックスや署名など、本人が能動的に意思表示した記録が残る形にする。読み流せる注記だけにしない。
加えて、柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師には、それぞれの法律に守秘義務の規定があります。整体院には法律上の規定がないぶん、雇用契約や就業規則で同じことを担保しておく必要があります。台帳をクラウドに置くなら、誰がどこまで見られるかの権限と、閲覧・変更の記録が残るかどうかを、導入時に確認してください。
地雷2:回数券は、売った時点で「預かり」になる
回数券は前払いの商品なので、有効期限の設定しだいで、適用される法律が変わります。
資金決済法の前払式支払手段には、発行の日から6か月内に限って使用できるものは適用されません(適用除外)。有効期限を6か月より長くすると前払式支払手段に該当しうる扱いになり、自家型発行者は未使用残高が3月末または9月末に1,000万円を超えたとき、財務局長等への届出が必要になります。1人から数名規模の院で残高が1,000万円を超えることは多くありませんが、有効期限の設計が制度の線に触れている、という事実は知っておいて損がありません。
もうひとつ、よく誤解されている点があります。特定商取引法の特定継続的役務は7つ(エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス)で、整体・整骨院はここに指定されていません。ただしこれは、特定継続的役務としての中途解約やクーリング・オフの規定が直接は及ばない、という意味にすぎません。返金しなくてよい、という話ではありません。消費者契約法には不当なキャンセル料条項を無効とする規定があり、施術を提供できなくなれば民法上の債務不履行の問題にもなります。「特商法の対象外だから」を根拠に、返金に応じない規約を置くのは危険です。
あわせて、厚生労働省のあはき・柔整広告ガイドラインは、自費の施術を行う施術所がウェブサイトに掲載すべき事項として、施術内容と通常必要とされる費用、主なリスク・副作用、標準的な費用や施術期間・回数を挙げたうえで、回数券やプリペイドカード等を販売する場合は、その商品の内容や契約内容を利用者が正確に理解して購入できるよう表示することとしています。売り方の説明責任が、明文で示されています。
| 先に決めておくこと | 決め方の目安 |
|---|---|
| 有効期限 | 6か月以内にすると資金決済法の適用除外に収まる。長くするなら未使用残高の把握もセットで |
| 残数の見せ方 | 患者さん自身がいつでも確認できる形にする。院側の記憶と台紙だけにしない |
| 返金の扱い | 未消化分の返金可否と計算方法を、購入前に書面またはLINEで渡す |
| 期限切れの扱い | 失効させるのか、延長に応じるのか。運用でその都度判断しない |
| 譲渡・家族利用 | 本人以外が使えるかどうか。使えるなら、台帳のどこに記録するか |
| 閉院・休業時 | 提供できなくなった場合の対応を先に書いておく。トラブルの大半はここ |
地雷3:広告規制は、院の種別によってかかる法律が違う
再来案内やキャンペーンの文面を考える前に、自院にどの規制がかかるのかを確かめてください。ここを取り違えている解説が少なくありません。
厚生労働省のあはき・柔整広告ガイドライン(令和7年2月18日)は、あはき法第7条と柔道整復師法第24条にひもづくものです。つまり、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師と、その施術所についての広告を対象としています。無資格の整体院は、この2つの法律の広告規制の対象ではありません。ただし対象外だから何を書いてもよい、ということにはならず、景品表示法の優良誤認表示などが別途かかります。また「マッサージ」「指圧」を名乗ればあはき法の側に入ります。
| 整体院(自費のみ・無資格) | 整骨院・接骨院・鍼灸院 | |
|---|---|---|
| あはき法・柔道整復師法の広告規制 | 対象外 | 対象(広告できる事項が限定される) |
| あはき・柔整広告ガイドライン | 直接の対象ではない | 保健所の指導の指針になる |
| 景品表示法 | 対象(優良誤認・有利誤認) | 対象 |
| 「マッサージ」「指圧」の名称 | 名乗るとあはき法の側に入る | 資格の範囲で使える |
柔整の側で広告できる事項は、法律と告示で列挙されています。柔道整復師である旨と氏名・住所、施術所の名称・電話番号・所在地、施術日または施術時間、ほねつぎ(または接骨)、届出をした旨、医療保険療養費支給申請ができる旨、予約に基づく施術の実施、休日または夜間における施術の実施、出張による施術の実施、駐車設備に関する事項。これ以外は「何人も、いかなる方法によるを問わず」広告できないという建て付けです。
ここで顧客管理の話に戻ります。「予約に基づく施術の実施」は広告できる事項に入っています。つまり、LINEでの予約受付そのものを案内することは、規制の枠のなかに収まります。問題になるのは、そこに効果の話を足したときです。
「治したら来なくなる」を前提にした再来設計
整体・整骨院の再来案内は、止めるべき「中断」と、送り出すべき「卒業」を分けたところから始まります。
この業種には、美容室やサロンには無い構造があります。訪問鍼灸に携わる方が「整骨院時代に、腕がいい先生は治すから患者が来なくなる、と聞いたことがある。確かに、卒業なら良い」と書き、そのうえで「でも患者が減る理由は、技術だけではない。説明。待ち時間。予約の取りやすさ。接し方。立地」と続けていました。治って来なくなるのは正常な結果で、止めるべきものではありません。
一方で、通わせ続けることが目的化する危うさも、現場から語られています。ある整骨院の院長は「来なくていいとは、言えなかった。ずっと来てくださいと一度も言っていないのに、患者さんがずっと来たいと思う構造を、自分で作っていた。継続率という数字に安心しながら、卒業の設計を後回しにする構造を、私は自分で維持していた」と書いていました。
この2つを両立させるには、台帳の側で状態を分けるしかありません。
台帳が機械的に拾えるのは「次回の目安を過ぎたのに予約が入っていない」ところまでです。そこから先の、中断なのか卒業なのかの判定は人がやります。判定の材料になるのが、3番目の項目である主訴と施術内容の記録です。施術計画が途中で止まっているのか、目的を達したのかが書かれていれば、担当が代わっても判定できます。
初回限定価格に頼りすぎると、この設計そのものが成立しなくなる点も付け加えておきます。患者側からは「2回目からの価格ギャップが大きいから、違うところの初回にまた行く」という指摘が出ています。初回で来た人が2回目に来ない構造は、案内文の巧拙では変えられません。
案内文に書けること・書けないこと
再来案内の文面は、効果の話を書かず、日程と予約の話に絞るのが安全側です。
あはき・柔整広告ガイドラインでは、広告に当たるかどうかを誘引性・特定性・認知性の3要件をすべて満たすかで判断するとしています。そして広告に該当する媒体の例として、チラシ・パンフレット(ダイレクトメール、ファクシミリ等を含む)、ポスター・看板、電子メール、バナー広告、リスティング広告、動画広告、SNS広告が挙げられています。
一方で、広告と見なされないものも明記されています。個々の利用者からの申し出に応じて、その都度送付するパンフレットや電子メールは、認知性を満たさないため広告とは見なされません。施術所内で掲示または配布するパンフレット等も、受け手が利用者に限られる限り誘引性を満たさないとされます。ウェブサイトも、自らURLを入力したり検索して閲覧するものなので、原則として広告には当たらないという整理です。
では、LINE公式アカウントの一斉配信はどちらなのか。ここについてガイドラインに明記はありません。友だち追加が「個々の利用者からの申し出」に当たるという見方もできますが、友だち全員に向けた販促の一斉配信は、3要件を満たして広告と判断される可能性が十分にあります。最終的には保健所の判断が入る領域なので、この記事で断定はしません。実務上の答えはひとつで、広告と判断されても問題にならない文面だけを送ることです。
| 避けたい書き方 | 言い換え |
|---|---|
| 肩こりが根本改善します/腰痛が治ります | (効果には触れず)お体の状態を確認するお時間をご用意しています |
| 改善率〇%/満足度No.1/たった1回で効果を実感 | (数字と最上級は使わない)ご予約可能な日時のご案内です |
| 施術前・施術後の写真を並べる | 掲載しない。加工の有無にかかわらず、効果を示す表現になる |
| 前回から〇か月です。そろそろ限界です | 前回のご来院から〇か月です。ご都合のよい日時があればお知らせください |
| 今だけ半額。この機会に | 料金と条件を明示する。回数券なら内容と有効期限もあわせて書く |
右側の書き方はどれも地味ですが、予約に基づく施術の実施は広告できる事項に入っているため、日程と予約の話に徹していれば枠を外れません。効果を書かないほうが、結果として送り続けられます。
LINEを基点に小さく始める
整体・整骨院で顧客管理を軽く始めるなら、患者さんがすでに使っているLINEに予約と案内を寄せるのが近道です。
整体院・整骨院の投稿を見ていると、「ご予約は公式LINEまたはお電話で」「公式LINEからのネット予約も再開しました」といった運用は、すでに日常です。つまずくのはその先で、複数店舗を経営している方が挙げていた詰まりは「登録してもらえない、登録された後、何を送ればいいかわからない、キャンペーンをやってもイマイチ反応がない、LINEから予約につなげたい」というものでした。アカウントを作ることではなく、予約と台帳につながっていないことが問題だと分かります。
エールスは、この「つながっていない」部分を埋めるためのサービスです。
| できること | 院の運営では |
|---|---|
| LINE・LIFFでの予約受付、確認、キャンセル | 予約の入り口が1か所になる。電話の分だけ紙に書く運用をやめられる |
| Googleカレンダーとの双方向同期 | 既存のカレンダー運用を残したまま、ダブルブッキングを防げる |
| 予約24時間前の自動リマインド | 無断キャンセルを減らす。予約タイプごとにオンオフを切り替えられる |
| 一斉配信(予約配信・即時配信、送信の成功と失敗をログで可視化) | 再来案内を送りっぱなしにせず、届いたかを確かめられる |
| AI顧客分析(購買意向スコア、顧客セグメント、次のおすすめアクション、再接触予測など9観点) | 「そろそろの人」を勘ではなく記録から決められる |
| テナント間のデータ完全分離、改ざん不可の監査ログ、2ロールの権限管理 | 誰がどこまで見たかが残る。要配慮個人情報を持つ台帳では効いてくる |
料金は、AI応答が月500対話まで使えるFreeプランが月額0円、AI顧客分析9観点とマルチテナントが使えるProプランが月額10,000円(年払いなら100,000円)です。まずは無料の範囲で予約とリマインドだけを回し、配信や分析が必要になった時点で切り替える進め方ができます。詳しい条件は料金プランに掲載しています。
向く院と、向かない院
向いているのは、自費が中心で、1人から数名規模、予約と再来案内を1か所にまとめたい院です。予約の入り口が電話とWebに割れていて、回数券の残数を院長が覚えている、という状態からの移行に向いています。
向いていないのは、次のような院です。ここは曖昧にしません。
- 療養費の請求まで1本化したい院。 エールスはレセコンではありません。支給申請書の作成や返戻の管理は行いません。
- 法定の施術録そのものをシステム側に持たせたい院。 施術録の様式と保存の要件は、専用のレセコン・電子カルテ側で満たしてください。
- すでにレセコンと予約の運用が固まっている多店舗。 動いているものを止めてまで移す理由は、多くの場合ありません。
始め方(4ステップ)
最初の2週間でやることは、項目を絞ることと、予約の入り口を1つにすることの2つだけです。
- ステップ1:いまの台帳を棚卸しする。 予約・カルテ・回数券・連絡先が、それぞれどこにあるかを紙に書き出します。2か所にあるものが、そのまま直すべき場所です。
- ステップ2:顧客台帳の項目を5つに絞る。 過去分をさかのぼって入力する必要はありません。今日以降の来院から記録を始めれば、多くの院は2、3か月で主要な患者さんの記録がそろいます。
- ステップ3:2週間、予約の入り口を1つにする。 電話で受けた予約も、その場で同じ場所に入れます。ここを2週間続けられれば、紙に戻る理由はほぼなくなります。
- ステップ4:再来案内を1本だけ自動化する。 「次回の目安を過ぎて予約が無い人」に、日程の案内を1本送るところから始めます。効果の話は書きません。
よくある質問
整体・整骨院の顧客管理でよく出る3つの疑問に、公開情報と現場の実情から答えます。
Q. 紙のカルテと併用してもよいですか。
A. 併用そのものは問題ありません。むしろ、法定の施術録を紙で残しつつ、予約と再来案内だけをデジタルにするのは現実的な進め方です。避けるべきなのは併用ではなく、同じ情報を両方に書くことです。予約は片方だけ、回数券の残数も片方だけ、と決めてください。両方に書いた瞬間から、どちらが正しいかを確かめる作業が発生します。
Q. スタッフ間で、どこまで共有すべきですか。
A. 施術の続きを話せる程度までは共有し、それ以上は権限で区切るのが基本です。実際、患者側からも「今まで施術してきた内容と共に、こういう話が好きとか、これは禁句のようなメモが書かれている。担当が代わっても引き継ぎしやすいように」と、共有されていること自体を肯定的に受け取る声があります。ただし主訴や既往は要配慮個人情報に当たりうるので、誰が見られるかを設定できること、閲覧の記録が残ること、退職時にアカウントを止められることの3点は、システムを選ぶ時点で確認してください。
Q. 無料のツールだけで、どこまでできますか。
A. 予約の受付とリマインドまでは、無料の範囲でも十分に回せます。LINE公式アカウントには無料で使える配信の枠があり、エールスのFreeプランも月額0円です。有料に切り替える判断の目安は「先月来なかった人を、名前で言えるか」です。言えないなら、記録から抽出する仕組みに価値が出ます。前述のとおり、1人から数名規模の院が意識している価格帯は月1,000円台から1万円前後なので、その範囲で足りるかどうかで選んでください。
まとめ|整体・整骨院には、数えておくべき数字がある
整体・整骨院の顧客管理は、探す時間を消すだけでは足りません。数えておかないと困る数字が、この業種には3つあります。
ひとつ目は回数券の残数と有効期限です。院の帳簿の都合ではなく、患者さんとの約束なので、窓口でその場で答えられる形にしておく必要があります。ふたつ目は最終来院日と次回の目安です。この2つが無いと、来院が途切れたこと自体に気づけません。3つ目は、保険を扱う院だけですが、直近12か月の施術月数と部位数です。令和9年1月からの基準を踏まえると、これを持っていない院は、患者さんが償還払いに切り替わる場面で説明ができません。
この3つを台帳に持ち、法定の施術録とは分けて運用する。請求のシステムと来院をつくるシステムは分けて、患者IDだけ揃える。案内文は効果を書かず、日程と予約の話に徹する。手順としてはこれだけです。多機能な製品を選ぶ前に、まず持つべき項目を5つに絞ってください。
LINEを使った予約や顧客管理の具体的な進め方は、次の記事でも扱っています。
- 顧客管理システム(CRM)とは?失敗しない選び方と目的別おすすめツール比較
- 美容室の顧客管理|紙カルテ卒業からLINE活用までの選び方
- エクセルで顧客管理する方法|台帳の作り方と壊れない運用ルール
- LINE予約システムとは|仕組みと導入の流れ
- LINEリマインドの方法|無断キャンセルを減らす送り方
- 業種別のLINE予約|業態ごとの使い方の違い
参考資料
- 厚生労働省「あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針(あはき・柔整広告ガイドライン)」令和7年2月18日
- 厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費について」の一部改正について(保発0601第5号/保発0601第4号/保医発0601第2号・令和8年6月1日、令和8年7月1日適用)
- 厚生労働省「柔道整復の施術者の方へ(重要なお知らせ)」(受領委任の取扱いの改正内容・施術録の5年間保管義務)
- 厚生労働省「衛生行政報告例」令和6年度(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復の施術所数)
- 厚生労働省・個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」別表4(医療関係資格に係る守秘義務等)
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(要配慮個人情報の定義と取得時の同意)
- 消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」
- 一般社団法人日本資金決済業協会「前払式支払手段発行業の概要」
- 静岡県「柔道整復師の施術に係る療養費の手引き(保険者担当用)」令和6年10月版
- エールス公式サイト(機能一覧・料金プラン)